消化器疾患はきわめてニーズの大きな疾患領域です。例えば、本邦における部位別癌罹患数の推移では胃癌・大腸癌はそれぞれ第2位・3位を占め、大腸癌はさらに増加傾向にあります。また、若年者に多い潰瘍性大腸炎やCrohn病といった炎症性腸疾患患者数も増加の一途を辿っています。
さらには、バルーン内視鏡やカプセル内視鏡などの小腸内視鏡機器の進歩に伴い、小腸病変を直接内視鏡下に観察出来るようになり、従来は見逃されていた小腸疾患も明らかとなり注目を浴びています。これら消化器疾患の診断において消化器内科医が大きな役割を占めることは言うまでもありませんが、最近では内視鏡治療機器や生物学的製剤や化学療法の進歩に伴い、治療における消化器内科医の役割もますます大きくなっています。
昭和29年に岡部治弥先生が設立された消化器研究室は、「日々の臨床で経験した症例から学び、そして、臨床から生じた重要な問題点を研究へと結びつけていく」ことをモットーとし実践してきた研究室です。近年では遺伝子解析や分子生物学的研究手法も取り入れ、多くの患者さんの診療に携わりながら、消化管癌の診断と治療、消化管悪性リンパ腫の臨床病理学的特徴、消化管ポリポーシスの長期経過、慢性炎症性疾患、薬剤による腸管障害などさまざまな消化管領域で研究成果を挙げてきました。これからも研究室のスタンスを継続しつつ、日本の消化器診療と研究をリードしていきたいと考えています。
消化器研究室は直近5年間の新入研者数も30名を数え、現役メンバーは90名を超えています。このうち、約20名が教員、医員あるいは大学院生として大学に在籍し、約70名の研究室メンバーが関連病院に勤務しています。大学では日々の診療に加えて教育・研究に携わっており、教育の一環として若手消化器内科医のX線・内視鏡診断向上を目指し毎週症例検討や論文抄読を行っています。
一方、関連病院においても、チーム医療が重要となる消化器疾患診療が円滑に行える体制を整えています。さらに、関連施設の大半は日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会の認定あるいは認定指導施設であり、日々の臨床のなかでも消化器疾患診療における指導が得られる状況にあります。
消化器疾患診療は、診療に加えて内視鏡治療も増加の一途を辿るため忙しいのも事実です。しかし、内視鏡診断・治療を行うことにより「自分で診断し、自分で治療する」という医師の醍醐味を実践することができることも消化器内科医の大きな魅力の一つであると考えます。消化器内科医のニーズは非常に高く、罹患者数の推移からみてもこの傾向は続くでしょう。多くの皆さんが消化器診療に興味を持ってくれることを期待していますし、皆さんと力を合わせて消化器内科診療ならびに研究を盛り上げていける日が来ることを願っています。